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これからの情報システムに求められる役割


情報システムに求められる役割が変わってきている。

アウトソーシング・サービスやクラウドの普及に伴い、近年では社内で行っていた情シスの業務を社外に移すケースが増えている。また、極限まで人を減らした「ひとり情シス」も話題に。「情シス不要論」がいよいよ論じられてきている。
情シスの業務を社外に移せる範囲が増え、コストも安いということが、情シス不要論の背景にある。しかし、たとえコストが安くとも、業務を社外に移すことで他の問題も発生しないのだろうか。こうした課題を考えるときに役立つツールに、「組織の経済学」というものがある。

ホールドアップ問題


組織の経済学は、ミクロ経済学の手法で企業などの組織を分析する経済学の一分野である。業務を社内で行うかそれとも社外にアウトソーシングするかという問題を考えるときには、「取引コスト」という概念を使う。取引コストとは、取引相手の探索、価格水準の設定、取引時に発生する事態の予測、契約の交渉などにかかる費用のことだ。たとえば、業務をアウトソーシングする場合には新たな取引コストが発生すると考えてよいだろう。

こうした取引コストは、取引の契約時に完全に把握するのが難しい。そのため、取引前の契約は不完備なものになることが一般的である。不完備な契約の結果、不測の事態が発生したときに契約の再交渉が難航し、利益が奪われたり物別れに終わったりすることも考えられるのだ。また、こうした契約再交渉の難航を想定して、取引相手が事前に投資のインセンティブ(意欲)を失う場合もある。このような、契約の不完備が事前または事後に取引当事者に悪影響を及ぼし、取引のコストがかさむ結果になることを「ホールドアップ問題」という。ホールドアップは、「手を上げろ」の意味。ホールドアップ問題による取引コストの増大は、取引前の契約不完備を避けられないことが原因であるため、有能で誠実な当事者同士の取引でも発生しうる点に問題の深刻さがあるといえる。

ホールドアップ問題が特に深刻なのは、関係特殊な投資が必要な場合である。関係特殊な投資とは、特定の取引にだけ役に立ち、他では役に立たない投資のこと。たとえば、あるメーカーが特別なカスタム部品を作る場合、納入先から値切られたり、突然取引を打ち切られたりするリスクがある。また、そのリスクを避ける必要があるメーカーは部品作りを効率化するための投資を抑制することになり、部品のコストが高止まりすることも考えられる。

こうしたホールドアップ問題は、取引を内部化して取引の当事者を内部の者同士にすることで避けられる。つまり、業務を社内で行うようにすれば、ホールドアップ問題は回避できることになる。企業の立場から見れば、業務を社外に移す場合には、社内で業務を行う場合のコストと、ホールドアップ問題のリスクを織り込んだ取引コストを比較して判断することが求められているといえる。

組織の経済学から考える情シスの役割


一方で、ソフトウェア開発は一人では手に負えない複雑な状況が多い。これらの状況を解決するために、分業する場合が大多数だろう。しかし、これらの分業により作業の全体像が見通せず、もの作りの楽しさを感じにくいという側面もここからはホールドアップ問題および関係特殊な投資の概念を用いて、情シス業務のアウトソーシングについて考えていこう。

アウトソーシングで成功する可能性が高いのは、関係特殊な投資が必要ない、標準的なシステムと考えられる。たとえば、特殊なマシンやOS上で動作するシステムよりも、Linuxなど広く使われているマシンやOS上で動くシステムの方が標準的といえるだろう。また、在庫管理システムや顧客管理システムなどでは、独自開発したシステムよりも、既製のパッケージソフトウェアをできる限り活用する方が標準的といえる。逆に言えば、標準化がされていないシステムの業務を社外にアウトソーシングすることは、ホールドアップ問題が原因で想定外のトラブルが発生するリスクが高いということになる。

標準化されていないシステムの場合、アウトソーシングを可能にするためにも、標準化を進めていくことがこれからの情シスの役割となりうるだろう。また、アウトソーシングを丸投げするのではなく、標準化された業務を切り分けることも検討すべきだろう。切り分けは、イニシアチヴを持ってアウトソースを活用することにもつながる。

アウトソーシング・サービスやクラウドの普及は、情シスにとってIT事業戦略やITシステムを元にしたサービス企画に取り組むよい機会だといえる。組織の経済学はそうした場合のよき道しるべになるはずだ。

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